漢方の役割

0

    言うまでもなく、当院は「漢方治療」を大きな柱としたクリニックです。当院の医師は全員が漢方に習熟し、漢方のすばらしさを知り、そして漢方を愛しています。

    しかし、患者様にとって本当に有益な医療を実践するためには、漢方を盲信するのではなく、西洋医学も含めた統合的な視野をもって、日々の診療にあたる必要があると考えます。そこで、種々の疾患において漢方がどのように働くのか、これから数回のシリーズで取り上げていきたいと思います。

    第1回 風邪と漢方

    のどが痛い、寒気がする、節々が痛い・・というような症状がでると、誰もが「あれ、風邪ひいたかな」と思います。でも、最初の対応は人によってずいぶん違うようです。

    私がこれまで実際に聞いた例

    • 風邪なんて肉食って酒飲んだら治るぞ(研修医時代の先輩ドクター)
    • スタミナドリンク飲むと治るんですよ(以前勤めていた病院の事務長)
    • すぐに薬局に走って風邪薬買います(患者さん)
    • 風邪なんて水風呂入れば治る(某漢方医)
    • 風邪ひくのはたるんでるからだ!(某教授)
    • 私は生まれてこのかた風邪ひいたことありません(患者さん)
    • 風邪を引いたときには玉子酒に限るのう(長谷川平蔵 by 池波正太郎)

    どうも、医者のほうが荒っぽいですね。
    一般にウィルス性の風邪で、「寒気がする、体の節々が痛い、首・肩がこって汗がでない」というような風邪の場合は、まず、体をあたためて体温をある程度上げることで、体がウィルスに対抗する環境を作ってやることが大事です。そのための漢方薬としては、葛根湯(かっこんとう)・桂枝湯(けいしとう)・麻黄湯(まおうとう)・麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)・桂麻各半湯(けいまかくはんとう)などがあります。鬼平さんの玉子酒も、体をあたためると言う点ではよく似た作用かも知れませんし、卵に含まれる卵白リゾチームには抗炎症効果や免疫増強効果のあることが知られています。

    ここにあげた漢方薬は、いずれも体温のセットポイントを上げる作用があり、お薬を飲んでも、体温がセットポイントに達するまでは「寒気」が続きます。そして、ウィルスを殺すのに充分な体温になってウィルスをやっつけることができたら、そのあとは毛穴が開いてうっすらと汗をかき、体温が下がります。すでにこのときには節々の痛みなども取れているはずです。

    ウィルス性の風邪の場合、これらの漢方薬は一服か二服をのんで症状がとれればそれで役目はおしまい。もし、そのあとに咳や痰が残るようなら次の段階に移る必要があり、竹?温胆湯(ちくじょうんたんとう)や辛夷(しんい)清肺湯(せいはいとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)などの処方の出番となります。

    また、同じウィルス性の風邪でも、最初から、のど痛、頭痛、発汗、熱感があり、悪寒を感じない場合は、葛根湯などの「あたためる」薬では上手くいかないことが多く、駆(く)風解毒湯(ふうげどくとう)・銀翹散(ぎんぎょうさん)・荊防排(けいぼうはい)毒散(どくさん)などを用います。残念ながらこれらの処方は、健康保険で使えるエキス剤にはないため、煎じ薬かOTC(薬局で買っていただく薬)での使用になりますが、とてもシャープに効くケースもあり、私は重宝しています。患者様のなかでも、駆風解毒湯(生薬を煎じてガラガラっとうがいをしてから飲み込む薬です)のファンの方も随分おられます。家庭で煎じるのが面倒くさくて・・・と言う場合は、最近、K社から「ガラゴック」という名前で駆風解毒湯のドリンク剤が出ており、これも試す価値があると思います。

    漢方では、悪寒のある風邪を「傷寒(しょうかん)」、悪寒を感じない風邪を「温病(うんびょう)」として区別しており、「どんな風邪にでも抗生物質と解熱剤とPL顆粒!」というような現代の医師よりもはるかに高度な観察力を持っていたことがわかりますね。



    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    2425262728  
    << February 2019 >>

    selected entries

    categories

    archives

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM